鳴かぬ蛍が身を焦がす
先生が話したい事など全くもって検討つかないが、
わざわざ連絡してきて、会いたいと言い出すぐらいなのだから重要な事なのかもしれない。
‘響子に会いたいんだ’
あの言葉が今でも耳に残ってる。
数ヶ月前まで自分の恋人だった人。
私は世界一の幸せ者だと思わせてくれた人。
当時の思い出が走馬灯のようにフラッシュバックしてきて、
気持ちを高ぶらせていく。
「高梨さん」
その時苗字を呼ばれると、図書室の入口に教師が立っていた。
「そろそろ図書室閉めるわよ」
部屋の掛け時計を見るととっくに下校時間が過ぎている。
「悪いけど、最後教室の鍵閉めて持ってきてくれる?私職員室にいるから」
わかりましたと私が言うと、教師は近くにあった机に鍵を置いて部屋を出て行った。
「……帰ろ」
ポツリ呟いて、本を返しに行こうと席から立ち上がった時――。
「――もう帰ったかと思いました」
部屋の扉の方から聞こえてきた声。
私がおもむろに目をやると、そこには晃が私を見つめて立っていた。
「晃君」
「電話もメールしても繋がらないし、まだ下駄箱に靴があったからここかなって」
話しながら図書室に足を踏み入れ私の方へ近寄る晃。