鳴かぬ蛍が身を焦がす
私が好きになったのは中学の先生だった。
二十三才で所属していた部活、読書部の顧問をしていた。
中学三年の時から付き合って、今年の四月で丸々二年が経つはずだった。
だが、突然の別れ。
あの時は平然な態度で受け入れる事が出来たけど、
別れて数日間は涙の日々が続いた。
本当に好きだった。
笑った笑顔と屈託の無い優しさがとにかく好きだった。
長い髪も先生が褒めてくれたからずっと切らずにいた。
でも涙が枯れ始めた頃、
このままじゃダメだと自分の弱さに直面して、一代決心をした。
まだ気持ち残るこの想いをどうにか断ち切らないと、
もっと自分がダメになる――。
髪を切る事で先生もきっぱり忘れようと決めたのだ。
「今日から私達も高二か~。やっと後輩が出来るんだね」
「そうだね」
親友と歩きながらたわいもない会話をする。
――ビュッ!
その時、強い南風が吹いて目の前は一瞬で桜吹雪になった。