鳴かぬ蛍が身を焦がす
本当の気持ち
色々な気持ちが込み上がってきて、
私は抑える事が出来なくなっていた。
晃の切ない思い。
先生へ対する感情。
自分の胸の中にある気持ち。
様々なものが組み合わさった結果、
カタチとして涙が自然と零れていた。
「……貴方を泣かせる為に、ここへ来たんじゃないのに」
私から視線を外し、悔しがるようにボソリ呟く晃。
その瞬間、漸く晃の手が私から離れた。
「晃君……」
「わかりました。もう邪魔しませんよ」
跡が残る手首を抑えたまま私は体を起こし、背を向けた晃の後ろ姿を見つめる。
「先輩の好きにしたらいいです。また昔みたいに苦しむなり傷つくなりすればいい」
まるで突き放すような言い方。
一瞬で私の心が不安な雲行きに変わる。
「――俺はもう貴方を見ない」
その言葉に、グサリと心臓に鋭利な刃物が刺さったような、大きな痛みを感じた。
先生と別れた時だってこんな痛み感じなかった。
とろけそうな甘い気持ちも、
胸が引き裂かれそうな痛い気持ちも、
みんな晃から教わったのだ。
無言のままうなだれるように、図書室を出て行こうとする晃。
「――待って!」
その姿に、私は咄嗟に晃を無意識に呼び止めていた。