鳴かぬ蛍が身を焦がす

着信拒否。

メールを送っても返事が来ない日々が続く。

普段なら送ってすぐ返ってくるのに……。

晃の存在が自分の中で大きかった事に気づき、
彼の事が好きだと確信したのは週末の事だった。

気づいた時この思いを伝えたかったが、その時既に音信不通だった。

だから私は週末明け、すぐに晃の元へ行く事に決めていた。






「一年A組……」

去年一年通った懐かしい教室の前。

昼休みだけあって廊下にはたくさんの生徒が行き交っている。

だが晃の姿は見当たらない。

「あ、ごめんね!」

その時、偶然晃とよく共に過ごしていた男子生徒を見かけ、思わず声をかけた。

「晃、じゃなくて桐島君いる?」

少しどきまぎした私を見て、不思議そうに私を見る後輩。

「桐島なら……」

後輩の口から出た言葉。

「学校辞めましたよ?」

一瞬、息使いが止まる。

「もう、来ても意味無いからって」

‘先輩に会うために’

あの時言った言葉なんて全然気にならなかった。

じゃ、本当に私に会うためだけにここへ――!?
< 23 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop