鳴かぬ蛍が身を焦がす
愕然とする私を見て、後輩が何かを思いだしたかのように教室へ戻ると、
何か手に持ってきて再び私の元に戻ってきた。
「もしかして高梨先輩ですか?これ桐島から預かってます」
そう言って私に差し出したのは……。
「もういらないからって」
手の平にポンと置かれた物を見て、私は言葉を失った。
私があの時貸したシャーペン。
それは確かに見覚えのあるキャラクターものの物で、
姿、形、当時のままだ。
震える手で受け取った私。
後輩はそのまま何処へ去っていき、
まるで世界中でたった一人取り残されたような感覚に陥った。
‘もう、いらないって’
夜空に星と月が浮かぶ。
私はベッドに寝そべったまま、ぼーっと無駄な時間な過ごしていた。
返されたシャーペンを眺めながら。
きっと使わずにずっと大切に閉まって置いたのかもしれない。
使用した感じが無いのも傷一つついていないのもその証拠だ。
「……」
晃は今までどんな思いで私を想い続けてくれたんだろう。
好きな人を遠くから見守るのはどんな感覚なんだろう。
「あ」
その時、頭にとある光景が過ぎった。