鳴かぬ蛍が身を焦がす

「いいの?凄い怒ってたみたいだけど……」

もしかして彼女……なのだろうか。

そう不安が過ぎったが、
いいんですと晃は無表情で短くり返した。

「買い物ですか?」

手に持った買い物を見た晃がポツリと呟く。

「一人で?それとも先生と一緒に?」

不敵な笑みを浮かべ嫌みっぽく話す晃の言葉に、
ズキンと胸が裂けるような痛みがした。

「まぁ、もう俺には関係ない事ですけど」

ずっと胸に引っ掛かっていた気持ち。

咽まで出かかってるのに、なかなか言い出せない。

今を逃したらもう、
二度と会えないかもしれないのに……。

「あれから先生とまた連絡取ってる――」

「……んで?」

「え?」

か細く呟いた私の言葉は周りの音で掻き消されてしまう。

「何で直接返してくれなかったの?シャーペン」

俯いていた顔を上げ、今にでも泣き出しそうな目で晃を見上げる私。

「私に直接言えばよかったじゃない。もう、いらないからって……!」
< 27 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop