鳴かぬ蛍が身を焦がす
シャーペンを本人からではなく第三者から手渡された、あの辛さ。
それは私と一切の関わりを断ち切られたような感じがした。
電話を拒否される事やメールが返ってこない事ならまだ耐えられる。
だが、本人が持っていた物を返された時、
その思い出まで簡単に捨ててしまうのかと無性に寂しくなったのだ。
「嫌いなら嫌いでいいの。でも私の事まで忘れないで……っ」
私は感極まって、とうとうその場で泣いてしまった。
こぼれ落ちる涙を自分の手の甲で拭き取る私。
だが、涙は滝のように流れ止まる事を知らない。
そんな私を辛そうに見下ろす晃。
「嫌いに……」
おもむろに動く長い腕。