鳴かぬ蛍が身を焦がす
結局は晃の手の平の上で躍らされていたって事…か。
「でも先輩は漸く自分の気持ちに気付いたって事ですよね?これがきっかけで」
何だかうまくまとめられたような言い方が悔しいが、
現実はそういう事になる。
「先輩」
優しく呟くと、晃は手の平で私の顔を包み自分の方に向けた。
「貴方の事が好きです。世界中の誰よりも」
またクサい台詞。
だが嫌じゃない。
「先輩は?」
そう促され、
恥ずかしながらも、私もと答える。
「やった。これで俺達両思いだ」
この上ない満面の笑みを浮かべる晃を見て、私もつられて笑みが零れた。
その瞬間、晃がほんの隙を見て唇にキスをしようとした。
「ちょっと、こんな場所で?」
ただでさえこんなビルの通路のど真ん中で抱き合ってる男女に、鋭い視線が注がれている。
一人戸惑う私に晃が意地悪そうにこう言った。
「今更ですか?先輩」
その言葉に私の表情が一瞬固まるが、
「……それもそうだね」
思い出し笑いをして晃の背中に腕を回した。
キスの味は甘酸っぱい恋の味がした。
「あのさ、学校辞めたって聞いたんだけど・・・」
「それも嘘です。学校入ってすぐ辞めるバカいます?」
「・・・」
THE END