鳴かぬ蛍が身を焦がす

私はその言葉を無視するように、
苛々と恥ずかしい気持ちの中、黙々と日替わり定食を食べる私。

「………怒ってます?」

「怒ってるわよっ!」

白々しく聞いてくる晃に私はテーブルをバン!と叩き、
立ち上がって怒りをぶつけてしまった。

その言動に騒がしかった学食が一瞬でシーンと静まり返る。

「――っもう!」

自分の顔が一気に赤くなるのが肌で感じる。

私は残ったまま学食のおぼんを持つと、
あまりにもいたたまれなくなって逃げるようにそそくさとその場から去って行った。

「――先輩!」

その後を私同様、おぼんを持ち慌てて席を立つ晃。

返却口に返した私と同じ動作をして、晃は後を追いかけてきた。

「何でそんなに怒ってるんです?友達の方だって、嬉しそうに席を譲ってくれた……」

「そういう問題じゃないの!」

春の木漏れ日が落ちる温かい廊下で足を止めた私は、
あまりにも空気を読めない晃に喝を入れた。

「久しぶりに会ったと思ったらいきなり好きだって言われた揚げ句、キスするなんて……!」

――公衆の面前であんな事をされたら誰だって怒るに決まってる!
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