鳴かぬ蛍が身を焦がす

一人怒る私とは裏腹に、
晃は感情を表に出す事なく無表情で私をじっと眺めていた。

「好きなのは嬉しいけど……、そんなすぐに気持ちを受け入れる事なんて出来ないよ」

「――先生の事忘れられないんですか?」

――え?

晃の言葉にドクンと大きな胸騒ぎ。

「別れた先生の事がまだ好きなんですか?」

――元カレの事は誰にも話した事が無いのに、何故――!?

冷や汗をかいた私に晃はフッと笑ってこう話しかける。

「何で知ってるの?って顔してますよ」

余裕の笑みを浮かべる晃に呆然とその場に立ち尽くす私。

「……中三の時から付き合ってるの、俺知ってますよ。二人でコソコソ隠れて図書室で会ってた事も」

頭を金づちで殴られたような激しい衝撃に、私は返す言葉もなくただ空いた口を手で塞ぐ事しか出来なかった。

まさかあの現場を見られていたなんて――。

「先輩、すぐ顔に出るからわかるんですよ。先生と話してる時なんかいっつも嬉しそうだったし」

制服のズボンに手を入れて、実に愉快そうに淡々と話す晃。
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