箱庭荘の王子サマ
時間が流れて外はすっかり真っ暗になった。
「もう帰ってきたかな…」
私はクッキーの箱を抱えて
部屋を出た。
予想通り。
さっきは留守だった左側の203号室には
灯りがついていた。
軽く髪を手櫛で直してから
チャイムを押す。
「……はい」
5秒ほどで返事が返ってきた。
声を聞くと、どうやら男性のようだ。
「あの、今日から隣に引っ越してきた……」
そこまで言うと
突然目の前のドアが開かれた。
「わっ!」
驚いてすっとんきょうな声を出してしまうと
ドアを開けた張本人は
わざとらしくため息をついた。
「…やっぱりお前だったか。桜坂瑞希」