箱庭荘の王子サマ
その名は『箱庭荘』
一番近くの不動産屋さんまでは
徒歩10分くらい。
朝の空気を全身に浴びながら
私は歩いた。
昔は、よくこの道を
彼と手を繋いで歩いていた。
でも最近はお互い仕事が忙しくて
中々一緒に帰ったりすることが出来ずにいた。
彼は有名なアパレル企業の企画をしていて。
私はショップ店員をしながらメイクアップアーティストの勉強をしている。
段々とすれ違う日が増えてきてから
なんとなく、こんな日が来ることは気付いていた。
それが、たまたま昨日だった、っていうわけで。
ふと顔を上げると
目の前に不動産屋さんの看板が見えた。