プリズム ‐そしてドラム缶の中で考えたこと-
-4-食物連鎖
僕は再び必要なものを家から持ち出して、ドラム缶での生活を取り戻した。
ペンキでドラム缶を白く染めた。
僕はこの空き地が気に入っている。
何故かと言えば、綺麗な桜の木が二本あるからだ。
僕はその一本に『寿太郎二世』と名付けて毎日可愛がっている。
僕が話しかけると『寿太郎二世』は決まって花弁を散らしてくれる。
それが何より嬉しかった。
辛い冬を終えて気楽なもんだ。
僕が『寿太郎二世』に何か話しかけようとすると、もう一本の桜の木から花弁が散って、僕の口に入った。
僕はそれを摘み出して、眺めて、鼻に乗せた。
「名無し桜の癖に、焼きもちなんかやいちゃって・・・・」
もう一本の名の無い桜に僕はそう語らった。
僕は上機嫌になって、灯りのある内にノートを取り出してこの再生した暮らしについて何か書こうと思った。
とても、とても嬉しかった。
再生が、つまり自分の力でこの生活を取り戻す事が出来たからだ。
僕はそう思うや否や、コンビニに買った、ツナサンドと梅おにぎりを食べた。
そして僕はオレンジ色の空に、目一杯手を翳してこの開放感に浸っていた。
その時だった僕は急に気分が悪くなってきた。
白ペンキのシンナーのせいかも知れない。
ひどい胸焼けだ。
僕は堪え切れなくなってしまって、ついには外に飛び出して、食べたものを吐き出してしまった。
僕はゼイゼイ言いながらしゃがみ込んでいた。
手を見れば白のペンキが付いていた。
とても悔しくなった。
僕はそのままで「生きようとしてるんだよ」と叫んでやった。
すごく充実していたのに。
立ち上がって空を見上げると星が出ていた。
見上げながら、僕はまたしゃがみ込んでしばらくじっとしていたが、やがてまた、そのシンナーの香りの中に戻って、そのまま知らずに眠り込んでいた。
ペンキでドラム缶を白く染めた。
僕はこの空き地が気に入っている。
何故かと言えば、綺麗な桜の木が二本あるからだ。
僕はその一本に『寿太郎二世』と名付けて毎日可愛がっている。
僕が話しかけると『寿太郎二世』は決まって花弁を散らしてくれる。
それが何より嬉しかった。
辛い冬を終えて気楽なもんだ。
僕が『寿太郎二世』に何か話しかけようとすると、もう一本の桜の木から花弁が散って、僕の口に入った。
僕はそれを摘み出して、眺めて、鼻に乗せた。
「名無し桜の癖に、焼きもちなんかやいちゃって・・・・」
もう一本の名の無い桜に僕はそう語らった。
僕は上機嫌になって、灯りのある内にノートを取り出してこの再生した暮らしについて何か書こうと思った。
とても、とても嬉しかった。
再生が、つまり自分の力でこの生活を取り戻す事が出来たからだ。
僕はそう思うや否や、コンビニに買った、ツナサンドと梅おにぎりを食べた。
そして僕はオレンジ色の空に、目一杯手を翳してこの開放感に浸っていた。
その時だった僕は急に気分が悪くなってきた。
白ペンキのシンナーのせいかも知れない。
ひどい胸焼けだ。
僕は堪え切れなくなってしまって、ついには外に飛び出して、食べたものを吐き出してしまった。
僕はゼイゼイ言いながらしゃがみ込んでいた。
手を見れば白のペンキが付いていた。
とても悔しくなった。
僕はそのままで「生きようとしてるんだよ」と叫んでやった。
すごく充実していたのに。
立ち上がって空を見上げると星が出ていた。
見上げながら、僕はまたしゃがみ込んでしばらくじっとしていたが、やがてまた、そのシンナーの香りの中に戻って、そのまま知らずに眠り込んでいた。