落としもの
「なあ、柚希・・・」
和也は私の方に手を差し出しながら微笑んだ。
私はこの手の意味がわからず、和也の手を見ていた。
そうしていると、和也は薄く笑い、
「今から俺らは親友な?・・・恋人ごっこは終わりだろ?」
「和也・・・。うん、そうだね・・・っ」
優しく微笑んでいる和也を前に、私の目尻には涙が溜まっていた。
涙がこぼれてしまわないよう、
私は唇を噛み締め、笑った。
「柚希、・・・さんきゅ、幸せだった」
「うん、私も・・・和也と付き合えてよかった。」
私達は握手をして、笑いあった。
静かに、お互いの存在を確かめながら・・・。
今日からは恋人じゃなくて、親友。
私はそう心に決めて、教室を出た。