狼少年の話
「周りの人が狼の話は嘘だって言うのに、聞かないんです!このままじゃ被害が出ますよ!」
若い隊員に言い寄られ、ガランは仕方ねぇなぁと溜め息をついた。
「小僧、こい」
ガランは横に立つルカの腕を掴み、人だかりへ歩き出す。
突然のことに、ルカは引っ張られるまま歩くしかない。
「な、なんだよ!離せ!」
「ルカ!」
サラが後を追おうとするが、若い隊員に止められた。
「行っちゃだめだ、危ないから!」
肩を押さえられて動けなくなったサラは、必死に抵抗するルカを見送る事しかできなかった。
「ルカ…」
嫌な予感がする。
胸騒ぎが、収まらない。
ルカはガランに引っ張られたまま、人だかりの中心まで連れてこられた。
他の村から来た男は興奮冷め遣らぬ様子で、村人達を威嚇するように睨んでいる。
「よぉ、ちょっとお邪魔するぜ」
ガランはそう言って男の前にルカを引っぱり出した。
「な、なんだお前ら!さっさと狼を出しやがれ!」
冷静さを失っている男の目は血走り、手には薙刀が握られている。
それを振り下ろされるのではと、村人は近づけずにいたのだ。
「そのガキが狼の居場所、知ってるらしいぜ?なんせ噂の言い出しっぺだからな」
ガランはにやにやと楽しそうに男に告げた。
ルカは冷や汗をかきながらも、真っ直ぐに男を見上げている。
ガランにとって、これほどの好都合はなかった。