狼少年の話
「ドクじいちゃん!」
ルカはやっと解放され、ドクが救世主の如く輝いて見えた。
「わしが村をちょっと離れとる間に、こんな騒ぎが起きるとは…。ガラン、おぬしにも責任を問わねばらなんようだ。そしてそこの2人、わしの家に来なさい」
有無を言わさぬ気迫でそれだけ言うと、ドクは来た道を戻り始めた。
男もすっかり意気消沈し、ばつが悪そうにドクの後に続いた。
ルカも2人を追いかけようとするが、立ち止まり、ガランを見上げる。
「俺は、悪いなんて思ってないからな」
それだけ言って立ち去ろうとすると、ガランはルカの腕を力強く掴み、耳元で言った。
「今に分かる。お前の犯した罪の重さを。その身をもって…な」
ガランの言葉にルカは一瞬ぞくっとしたが、腕を振り解いて走った。
なぜだろう。
ものすごくサラに会いたい。
サラといた場所に戻ったが姿はなく、近くの人に聞いたらサロメと家に帰ったらしい。
ルカはしぶしぶドクの家に向かった。
ガランは1人隊舎に戻り、申請書を書いていた。
ここに国というものはなく、それぞれの部族の村を統括している役所があるだけだ。
ガランはその所轄で働いていることになる。
父親が所長を勤めているおかげだが。
申請書には「処刑」の文字が書かれていた。