メイドさんの恋愛事情
「ぷははははははっ」
大きな吹き抜けの玄関に響いたのは、会長の息子の笑い声だった。
「じゃあさ、妃菜があたたかくしてよ、ここの家」
「………は?」
「おいしいご飯があって、みんなが笑ってる家にして?ここを。」
意味がわからない。
なんであたしがここの家を?
「妃菜は今日からこの家のメイドになるんだよ。学校にも今まで通り通ってていいし、掃除は専門のスタッフがやってくれる。妃菜は、住み込みでそれ以外の家事をやってくれればいいんだ。日給はさっき言った通り2万円。どう?いいバイトだろ?」
さっきとは違う穏やかな顔でそう言う会長の息子。
家事をやるだけで日給2万円?
確かにいいバイトだけど…。
「あ。エロいことはしないから安心して?」
いつの間に移動したのか、あたしの耳元で会長の息子は言った。
もうそれがエロいんですけど…。
正直怪しいとは思った。
それでも、お金が必要なあたしには日給二万円は大きすぎて…。
「信じていいんですね?」
「うん。信じて?」
コイツは嫌いだけど、日給2万円のバイトは逃したくない。
それに、あたしがいなくなったら信パパ達だって楽なはずだし…。
「……わかりました。そのバイト、します。」
あたしがそう言うと、会長の息子は嬉しそうに笑った。
コイツ、笑うとちょっとはかっこいいかも……。
そういえば、あたし、こいつの名前知らないよ。
「あの、名前は?」
そう聞くと、会長の息子は驚いた顔をした。
だって、今日初めて会うんだもん。
知ってるはずないじゃん。
「ご主人様って呼んで?」
「…………はい?」
「だから、名前はご主人様!」
……………住み込みのバイトは、一筋縄ではいかない予感です。