メイドさんの恋愛事情
この人って二重人格なんですか!?
結局、あたしは引きずられるようにレストランに入って行った。
「いらっしゃいませ」
そう言った店員さん、あたしを見て顔をしかめた。
それもそのはず。
だって、こんな高級なところに来るなんて思わなかったから、服は思いっきり普段着。
川瀬さんはスーツなのに、あたしだけルーズで…。
「何か?」
川瀬さんが王子様スマイルで店員さんに言う。
顔しかめたの見てたんだ…。
「失礼を言いますすが、そちらのお客様の服装が当店にはふさわしくないもので…」
あたしを無遠慮にじろじろと見る店員さん。
な、なによっ。
三つ編みにメガネ、灰色のパーカーにスキニーデニムの長ズボンですが何か!?
「わかりました。また来ます」
川瀬さんは王子様スマイルのまま店を出た。
うぅ、悪いことしちゃった……。
店を出たとたん、どこかへ電話し始めた川瀬さん。
出前でもとるのかな…?
「あの、私のせいですみま」
「乗れ」
謝ろうとしたあたしを遮って、目の前に止まった車にあたしを押し込む川瀬さん。
な、なんなのよー!
押し込まれたのはキャンピングカーみたいに大きい車。
「妃菜様ですね?失礼いたします」
女の人がメガネを勝手にはずして、あたしの目にマスカラを塗ってる。
な、何なの?
それが終わった後は着替えさせられて…。
車の後に出された時には、完璧なアイメイクとヘアセット、そしてコーディネートが終わっていた。
着せられたのは白地に胸元に大きなリボンがついた膝丈ワンピース。
清楚なんだけどすごくかわいい。
「よし」
川瀬さんはそう呟いて、あたしの手を握ってまたあの店に入っていった。