メイドさんの恋愛事情





《私立光明学園1年6組      川瀬冬夢》


そこにはそう書かれてあって。


つまり、渡されたのは生徒手帳。




「これ、なんて読むんですか?ふゆむ?」




あたしが素直にそう言うと、また川瀬さんはため息をついた。




「お前さ…、まずは学校名見るだろ、普通」




「学校名…………、ああああああっ」




私立光明学園、それはあたしが通っている高校なんです。




本当は公立の高校に入学するつもりだったんだけど、信パパたちの熱心な勧めでこの高校に通うことになったんだ。




光明学園は、県内で一番の進学校。




文武両道の名のもとに、運動部はほとんどが全国大会に出場。


そして、全国模試上位の約半分をこの学校がしめている、まさに進学校なんです。




その分学費は高いんだけど、あたしは特待生で入らせてもらってるからタダなんですっ。




「同じ学校だったんですか!?しかも同じ学年だなんて聞いてません!」




学校であったらどーすんの!?


気まずすぎじゃん!




「いや、俺も知らなかったんだよ。お前、すごい学校だと地味らしいからな?」




う………。


たしかに地味だけど…。




「だからって…。なんでよりによってあたしなんですか……」




運ばれてきたデザートのアイスを食べながら、ぼそぼそと文句を言っていると、川瀬さんはまた何かを差し出してきた。




今度は名刺。




《株式会社KAWASE日本本部社社長

川瀬 冬夢
Kawase Toumu》




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