メイドさんの恋愛事情





大きいテーブルには、お昼のソースで作ったグラタン、サラダ、ミネストローネとフランスパンが並んでいる。




そして、あたしの向かいには無言でフォークを動かす川瀬さん。




チクタクチクタクと、時計が針を動かす音がやけに大きく聞こえる。




き、気まずすぎる…。


こんな無言、耐えられない!




「あの…、おいしいですか?」




「………あぁ、うまい」



勇気を出して話しかけたのに、ちっとも続かない会話。




ご飯って楽しく食べるものじゃないの!?




「あの、川瀬さ」
「お前」




あたしの言葉を遮って、川瀬さんはため息をついた。




な、何…?


あたし、何か悪いことしたかな…。




どんな言葉を言われてもいいように、体を強ばらせる。




しかし、川瀬さんの口から飛び出してきたのは。




「川瀬さん、って呼ぶのやめろ」




「……………はい?」




何じゃそりゃ?




「同い年なんだから、さん付けとかしなくていい。てか、やめろ」




確かに………ね。




「じゃあ何て呼べばいいんですか?」




「冬夢でいい。」




淡々と言う川瀬さんだけど…。




「冬夢さん、ですか」


「だから、冬夢でいいって。」




いやいや、呼び捨てなんて無理です。


いくら同い年でも、あたしは雇われの身。



呼び捨ては無理だから…。




「冬夢くん、って呼びますね?」




あたしがそう言うと、川瀬さ…、冬夢くんは、小さく頷いてリビングを出て行ってしまった。




ちょ、ごちそうさまはちゃんと言いなさい!←




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