メイドさんの恋愛事情
「ただいま」
あたしが肉じゃがを煮込んでいると、玄関から冬夢くんの声がした。
「お帰りなさい」
そう言いながら、肉じゃがを見る。
まだじゃがいも固い…。
もうちょっと早く作り始めれば良かったな。
「お帰りなさいませ、じゃないんだ?」
「………そっちの方が良かったですか?」
ちゃかすように笑う冬夢くんに冷たくそう言うと、冬夢くんは、別に、とそっぽを向いた。
「すみません、まだ肉じゃができてないんで。先にご飯食べててください」
あたしはそう言いながら、ご飯をお茶碗によそった。
今日のメニューは、肉じゃがときんびらごぼうとほうれん草のおひたし。
きんびらごぼうとおひたしは、もうテーブルに並べてある。
「あー……、じゃあ風呂先入る。もうわいてんだろ?」
「……すみません、まだわかしてないです」
あたしがそう言うと、冬夢くんは明らかに機嫌が悪くなった様子。
「じゃあ、待ってる。早く作って」
言われなくても早く作ってるっつーの!
そう言いたくなる気持ちを抑えて、あたしはひたすら肉じゃがをかき回した。
そろそろいいかなあ…。
あたしが肉じゃがを皿にもって持っていくと、冬夢くんは目を輝かせた。
「肉じゃがとか、久しぶりなんだけど」
冬夢くんはおいしそうに肉じゃがを頬張った。
「…………おいしい♪」
「良かったです」
やっぱ、おいしい、って言ってもらえると嬉しいな♪
さっきまでのイライラが嘘みたい。
あたしが心の中でニコニコと笑うのと逆に、冬夢くんは少し寂しそうに言った。
「肉じゃがとか、家庭料理食べるの久しぶりだから………」
「……………え?」