メイドさんの恋愛事情
見ていたかのようなタイミングで、スイートルームに入ってきたお姉さん方。
「妃菜様ですね?本日ヘアメイクを担当します、澤田ゆきです」
「同じく、竹川綾子です」
礼儀正しく頭をさげられて、とりあえずあたしも頭を下げる。
そして、隣の部屋に連れていかれて、ドレッサーの前に座らされた。
「失礼します♪」
………みるみるうちに、あたしが変わっていく。
冴えない地味子なあたしが、かわいくなってる。
メイクって、すごい…。
もしかして、メイクはあたしが“望月妃菜”ってバレないようにするため?
家に帰ったはずなのに、あたしがいたらおかしいもんね……。
「出来ましたよ」
髪は内巻きのふわふわカールに、大きいけれど控えめな花柄カチューシャ。
つけまつげをつけたまつげに、綺麗な色のチークとうるうるなリップ。
ピンクと花が綺麗なネイル。
そして、白いシフォンワンピを着たあたしは。
本当に別人だった。
「妃菜様はもともとお綺麗ですから、メイクしたらもっとお綺麗になりましたね♪」
「足が細くてうらやましいです♪」
なんてお世辞まで言ってもらい、気分は絶好調♪
時間はまだ2時だし、小腹がすいたあたしはホテルの近くに行ってみることにした。
冬夢くんは、まだ寝てるから起こさない方がいいよね……。
あたしはそぉっと、部屋を出てエレベーターに乗り込んだ。