メイドさんの恋愛事情
「ほんっと君かわいい!タイプど真ん中なんだっ♪」
ニコニコと歯を見せて笑う青木くん。
…………歯並び悪いなー。(笑)
あんなにブスって言ってたのに?
何がタイプど真ん中、よ。
「お世辞でしょ?」
「違う!ほんとにかわいいよ、君」
………吐きそう。
きっと青木くんはあたしがあの地味子だなんて気づいてないんだろうなー。
メイクの力ってすごいよね。
まあ、メイクしたってあたしのブスさは変わらないけど。
いい加減イライラしてきたあたしは無視してお店探しを再開することに決めた。
「あたし忙しいので」
「ちょっと、待ってよ!」
歩き出そうとしたとき、掴まれた腕。
掴まれた瞬間に、鳥肌がたった。
「せめて、メアド教えて!?お願い!」
「嫌」
「じゃあ、名前だけでもっ」
「絶対嫌。てか離して」
腕を離そうとしない青木くんに、イライラしてそう言い放つ。
「チッ……。仕方ねぇな……」
やった、離してくれる!
あたしがそう期待した瞬間。
「………っなに!?」
あたしの両腕を愉快な仲間たちが掴む。
ニヤニヤした顔が気持ち悪い。
「優しくするから……ね?」
な、何を優しくするの!?
「離してっ!離しなさいよッ」
いくら暴れても、愉快な仲間たちは腕を離そうとしない。
こうなったら……、空手で……!
あたし、空手強いんだからね!?
骨折したってしりませんからね!?
正当防衛だからねー!
そんなことを心の中で叫びながら、足を蹴ろうとしたとき………。