メイドさんの恋愛事情
「………やっと行った」
ふぅ〜、なんて息を吐く冬夢くん。
…………キスの抗議と助けてくれたお礼、どっちを先に言えばいいんだろう。
「…………ありがとうございます」
先にあたしの口から出たのは、お礼の言葉。
「あー…。別に?」
冬夢くんはそう言ってそっぽを向いた。
もしかして………照れてる?
なんか、抗議しずらいじゃない……!
「まあ、無事でなにより、的な?でも今度からは一人で出歩くな」
「………………はい」
あたしがそう言うと、冬夢くんは安心したように微笑んだ。
…………そんな笑い顔、普通の女の子だったら悩殺だよ?
「じゃ、行くぞ」
「………………え?」
「腹減ったから出歩いたんだろ?何か食いに行くぞ」
…………あたし、今日の冬夢くんには助けてもらいっぱなしな気がする…。
「早く行くぞ」
「はい」
そのとき、冬夢くんの腕を掴みたくなった…、なんて。
あたしだけの、秘密。
好きな訳じゃない。
助けてくれたから。
――――――ご主人様、だから。