メイドさんの恋愛事情
「かしこまりました、奥様」
美香さんがそう言うと、ゆっくりとベンツが動き出した。
「美香さん…?どこか目がお悪いんですか?」
あたしがそう言うと、美香さんはキャハハハハと笑い出した。
「違うわ、妃菜ちゃんのコンタクトを買いに行くのよ」
…………コンタクト?
してみたかったけど、美和ママ達に育てられてる身だから言えなかった。
すごく、嬉しいかも…!
でも、ふと手元を見るとお財布どころかバックさえ持ってないあたし。
美香さんに引っ張られるまま出てきちゃったから、バック持ってきてないんだった…!
「すみません、美香さん、私お財布持ってきてなくって…」
申し訳なくそう言うと、美香さんはキョトンとした顔になる。
「私がいっしょなんだから私が払うに決まってるでしょ?うちで働いてるうちは妃菜ちゃんは私の娘なのよ?妃菜ちゃんは謙虚ねぇ」
…………(泣)
神様、私の周りにはいい人がたくさんいすぎますよぉ…。
「ありがとうございますっ…!美香さん、好きですぅ!!!!」
「私も妃菜ちゃん好きよ〜!もう、今すぐ冬夢と結婚して本当の娘になってほしいわ♪」
そう美香さんが言った瞬間、あたしの胸がドキンと高鳴った。
美香さんは冗談で言ったんだよ?
「は、はははは…」
「あ、もうすぐ着くわよ!」
美香さんのその声と共に、ベンツは小さな病院に入っていった。