メイドさんの恋愛事情
「お願いだから…、お願いだから裏切らないで…」
冬夢くんは静かにあたしを抱きしめてくれた。
「俺は、絶対、妃菜を裏切らない」
そんな、力強い言葉と共に。
あたしは冬夢くんの大きな胸の中で、わんわんと泣き出した。
住宅街のど真ん中で泣いているあたしを、道行く人は不信な目で見ているのだろう。
でも、そんなことは気にならなかった。
冬夢くんの言葉で、あたしの中は安心感のような感情で満たされていく。
その時のあたしは、まだこの感情がなんなのかわからなかった。
恋、という感情を、知らなかったから……