メイドさんの恋愛事情
遥希side◇妹じゃない
妃菜がかわいくなった。
違う、妃菜のかわいさがみんなにバレてしまった。
それだけで、俺の世界は180°違うものになる。
「おはよう」
朝の校門で偶然会った妃菜。
髪を恥ずかしそうに触りながら言う妃菜は、誰にも見せたくないぐらいかわいかった。
「……………妃菜?どうしたの、それ」
「昨日、バイト先の人がしてくれたの。変かなあ?」
そう言って心配そうに俺を見つめる妃菜。
そんなかわいい顔で見つめないで。
……………抱きしめたくなるから。
「やっぱ、変?」
何も答えない俺を見て、妃菜が心配そうな顔をした。
「……………かわいいよ、すごく」
「ほんとに!?嬉しい♪ありがとう、遥兄ちゃん」
ニコニコと笑う妃菜。
ダメだって、そんな顔して笑ってちゃ。
抱きしめたい、今すぐに。
「はーるきっ!おはよ!」
差し出しかけた手を止めたのは、友達の力弥の声だった。
「お、おはよ」
「てかこの子遥希の彼女!?超かわいいじゃん!」
「あたし妹です」
力弥の声に間をあけずに、妃菜が笑って言う。
確かに、戸籍上は義理の妹だけど。
…………俺は、妹なんて思ってない。
「え、遥希こんなかわいい妹いたっけ!?」
「あはは、かわいいだなんてお世辞上手ですね」
「お世辞なんかじゃないよー!マジだってマジ!」
「……………じゃない」
「え?」
どうしても言いたかった。
「妃菜は、妹じゃない。従姉妹、だ」
妃菜は恋愛対象なんだ、という思いをこめて。