メイドさんの恋愛事情




「妃菜ちゃんがご飯食べにくるってー♪」




「…………………は?」



夕食時。


部活で家に帰るのが遅くなった俺が1人夕食を食べている目の前で、ケータイをいじっていた母さんの一言に、俺は目を見開いた。




「ほんとにー?やったあ」




舞がぴょんぴょん飛び跳ねながら喜んでいる。


父さんもニコニコして。




「遥希は嬉しくないの?」




仏頂面をしたままの俺に、母さんが言う。




「いや、嬉しいけど、この煮物がまずすぎて」


「何よー!たまには和食が食べたいと思ってわざわざ作ってあげたのにっ」




母さんはぐちぐち言いながらキッチンに行ってしまった。




本当はこの煮物すごくおいしい。


和食を作るのが苦手な母さんが料理本を見ながら頑張ったんだって、舞が言ってた。


きっと俺の大会が近いから体に気を使ってくれてるんだろうな、と思ったし。




でも、あんなにかわいい妃菜が家に帰ってきたら、と考えたら複雑だった。




“いいお兄ちゃん”でいられるかな、と。




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