メイドさんの恋愛事情
妃菜が来る日。
俺は部活をサボって、部屋で寝ていた。
いや、正確には寝たふりをしていた。
寝ていれば、食事の時以外は妃菜と顔を合わせなくて済むと思ったから。
でも、そんな考えは甘かった。
独り言を言いながら、ペンを持って俺に近づく妃菜。
目を開けると、目の前にはイタズラをする幼稚園児のように瞳をきらきらさせた妃菜がいて。
俺の中の
“いいお兄ちゃん”
はいなくなってしまった。
「やだ……やだよ!」
妃菜の泣き声も耳に入らない。
妃菜がどこかへ行ってしまわないように。
妃菜を自分だけのものにしたい。
それしか、考えていなかった。