メイドさんの恋愛事情
妃菜、お買い上げ!?
「意味わかんないです。てか、あたしもうクビになったんで、メイドじゃないですから。」
掴まれた腕を自由にしようと、腕をブンブンと振ってみた。
だけど、目の前の人は全く離してくれない。
「うん、知ってる。だって僕がクビにしたんだもん」
…………はあ?
あんたがあたしをクビにした?
ってことは……。
「……あんた会長の息子?」
「うん」
恐る恐る言った言葉に目の前の人はニコニコと頷いた。
「あんた………」
「ん?」
「なんてことしてくれたのよぉっ!あんたのせいで仕事クビになったの!クビよクビ!せっかくいいバイトだったのに!」
ばしばしと会長の息子の体を叩いた。
イライラする、なんでこんなへらへらした奴にあたしがクビにされなきゃいけないの!?
一度は止まったはずの涙がまた溢れ出る。
悔しい悔しい悔しい!
「あたしが何したって言うの!?なんであたしがクビなのよっ」
泣きわめくあたしに、会長の息子は笑った。
「クビ?違うよ、転勤してもらうだけ。」
「………転勤?」
転勤ってなんだそれ。
あたし引っ越す予定なんてないのに!
会長の息子は、あたしの耳元で囁いた。
「俺専属のメイドにならない?」
低くて甘い声が、あたしの鼓膜をくすぐる。
「…………は?」
何言ってんのコイツ。
おかしいでしょ。
「日給2万円。どう?」
に、にまんえん…!?
あり得ない金額に動揺した瞬間に。
「契約完了」
その言葉と同時に塞がれたのはあたしの唇。
呆然とするあたしに、会長の息子は囁いた。
「勤務地は俺の家、だよ」