まあるい固体の上で【詩集】
あの婉曲の空間で
片方の一本の先は
握った手が緊張で濡れているから
この後きっと無機質だけれど
生々しい鉄の臭いが
私の手の平にうっすらとつくんだろうな、
とふと思う。
するどい視線を的に向けたその時も
今日は暑いなあ、なんて考えている。
けれど肩線上に
真っすぐ下りてきたその時に
私の世界に音は消え、
BGMのない孤独な世界が開かれる。
たったその数秒にしかない
空間、時間を、完全なる孤独を、
私は愛してた。
もうこの真っ暗から
あの丸い光りが登ると
私はあの空間に行けなくなるのだろう。
そう思うと、何だかぽっかり穴が空いた