群青
場所は教室。
夕刻。夕日の赤と夜の群青が空を混ぜる時分。
教室にいるのは僕と彼女だけ。
「……何、みーちゃん」
まるでネコみたいに僕は彼女を呼ぶ。
昔からの習慣、と言うか何と言うか。
彼女が僕を「夏くん」と呼べば、僕は彼女を「みーちゃん」と呼ぶ。
それは反射に近いものだと僕は思う。
無意識の内に返したそれ。
もう子供でもないから、あまり「みーちゃん」とは呼ばないようにしてるんだけど。
ま。別に誰もいないからいいけどさ。
「あのね、夏くんにお願いがあるの」
「やだ」
「あぁん!!いいじゃない話くらい聞いてよ。夏くんのいけず!!」
「わかった。話だけ聞く」
つまりは聞くだけ聞いてあとは帰るって事だけどさ。