2人だけ
「大丈夫。君はみんなからとても愛されてた」
涙を拭っていた手首を掴まれた事に身体が跳ねてビックリする。
そこには、数分前にわたしを見ていなかった瞳がいま向けられていた。
「安心して」
はっきりと通った彼の声は少しだけ震えていたかも知れない。
手首からそっと手が離された。
パイプ椅子が軋んで、あの人は立ち上がる
滲んで観えた視界には、
病室から出て行く後ろ姿が歪んで見えたの
(以前のわたしの日記を指先で触れて
なぞるように懐かしんだ)