元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
「滝沢!」
第二応接室を出たあたしは廊下を真っ直ぐに進もうとした。
だが、それは彼によって阻まれた。
「北条、先生?」
もたれていた壁から離れた彼は、あたしの目の前まで来て動くのを止めた。
「送るって言っただろ?」
そういえば、そんな事言われた気がする。
「でもあたし、体調悪いわけではないですよ。
だから、」
「いいの。
今日は滝沢を家まで送るって俺が決めたから。」
「でも…」
そういう問題じゃない。
心の片隅から声がした。
違う、そうじゃない。
その声があたしの脳内で木霊する。
だが、あたしは戸惑った。
『そういう問題じゃない』って何?
誰とも分からない人の声は鳴り止まない。
あたしは頭を抱え込みそうになった。
「人の厚意を素直に受け取る事も大切だぞ?」
その一言で何も言い返せなくなったあたしは、大人しく彼についていった。