元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~


慣れ、という言葉が頭に浮かぶ。


この言葉は必ずしも悪い言葉ではない。


緊張や不安から過剰な程感じていた心の疲れが落ち着く時である。


だが、初心を忘れてしまい、気が緩みミスしやすい時期だ。


他のマイナス要素に邪魔されやすくもある。


そして今、“慣れ”は好ましくない方向に進もうとしていた。


「滝沢、大丈夫か?」


「平気ですよ!」


現在荷物運びの真っ最中である。


最初は運ばなければならない荷物の量に驚いたが、彼と協力してやるには問題なかった。


「悪いな、女子に重い物運ばせて。」


「そんなの気にしないで下さい。」


始めこそ重かったものの、荷物を持って行っては戻る、この往復を繰り返していると慣れてくるのだ。


今では調子良く運んでいて、やり甲斐まで出て来たのであった。


また段ボールを一つ置いて戻って来た。


「北条先生、次の…」


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