元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
チャイムと共鳴するようにドアが開く音がする。
彼は前のドアから、あたしは後ろのドアから入る。
生徒は誰も振り向かなかった。
「今日は52ページからだったか?」
「北条先生、52ページ終わりましたよ。
今日は58ページです。」
一人の女子生徒の声が響いた。
「そうかそうか。
すまないな、馬場。」
「いえ。」
「じゃあ58ページから。」
その後は淡々と授業が進められた。
生徒の私語は一言も聞こえない。
彼の授業はあの頃よりも明らかに上手い。
今は教育実習生の身であるあたしは、彼の授業の仕方を学ばなければならないのに、彼の授業の中身にばかり集中してしまう。
それくらい引き込まれる授業を出来る教師なんてそういないはずだ。
凄い。
その一言に尽きる。