元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
ちょうどその時だった。
目の前が少し違う。
「あっ」
出した声に意味などない。
ただ自分が階段から落ちようとしていている時に、訳もなく出た。
あたしがいるのはまだ階段の上の方だ。
段ボールは手から滑り落ち、音をたてながら階段を下りていく。
あたしはそんな光景を眺めていた。
「滝沢!」
そう、あたしは落ちなかった。
この人が助けてくれたから。
踊り場には段ボールが二つ並んでいる。
一つは彼が持っていたもの。
「大丈夫か?」
怪我はしてないから大丈夫だと思う。
「大丈夫です。
すいません。」
そう言ってるのに、あたしは抱きしめられたままである。