元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
あたしは最後に部屋を出て、ドアをゆっくりと閉めた。
朝の騒がしい廊下には、生徒がチラホラと見える。
それは職員室に入っても同じだった。
学級委員の仕事で訪れている子や、部活動で顧問の指示を仰いでいる子、教師に呼び出された子、きっとそれぞれに用事があるのだろう。
いつもと同じ光景なのに、幾分違って見える。
「滝沢!」
「あ…」
北条昴であった。
自身の席にいると思っていたが違ったらしい。
あたしは思わずどうすればいいか分からなくなった。
挨拶されたのだから、あたしも挨拶すればいい。
でも出来なかった。
彼の態度は、まるで昨日の事が幻だったかのように普段通りなのだ。
よそよそしい態度を取られるのではないかと予想していたあたしは、想像とのギャップに何も出来なかった。