元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
全てを終えると、計600枚のプリントを彼の元に運ぶ。
「先生、終わりました。」
「ありがとう。
にしても遅かったな。」
「…すいません。」
あたしは何か手違いでもしただろうか?
そんな心当たりは無いし、コピー機に高速モードもなかった。
「何で朝の早い時間にコピーするか分かるか?」
「え?」
いきなりの質問に答えられなかった。
「分かりません。」
「朝この時間にコピー機使う先生が少ないからだ。」
「…」
「誰も一台もコピー機使ってなかったら、三台あるうち二台同時に使っても問題ないだろ?」
なるほど、そういう事か。
「そうですね。」
「滝沢達はこの実習で学ぶべき事は授業の仕方だけじゃない。
どうやったら手際良く仕事が出来るか、そもそも教師ってのがどういう仕事をするものなのか…学ばなきゃいけない事は沢山ある。
俺は滝沢の担当になった以上、出来る限りのことを滝沢に教えたいんだ。」
「ありがとうございます。」
彼の言葉はあたしの胸にスッと入っていった。
今の言葉だけでも、多くのものを得たような気持ちになった。