元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
一つの契機―昴―
天災は忘れた頃にやってくるとよく言うが、本当にそうだ。
忘れた頃の人身事故だ。
天災ではないにしろ、全く気分の良いものではない。
俺は改札の前、掲示板の近くに立っていた。
事故と電車の状況を知りたくてここまで来たのは良いものの、人が多すぎて後ろに戻れなかった。
電車は暫く動きそうにないので、一人で飯でも食べに行こうかと思ったが、後ろにも行けない今、諦めてただ立っていた。
半ばぼーっとしてる時、後ろの方から声が聞こえた。
「すいません。」
俺は慌てて振り返る。
滝沢の声に間違いなかった。
案の定、滝沢は傍まで来て掲示板を見た。
俺には気付いていないようだ。
それから俺は、無意識にその名を呼んだのだ。
「滝沢?」