元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
一つの契機―希―
目の前にいたのは北条先生と滝沢先生だった。
目の前といっても、正しくはあたしと二人の間には人が立っている。
邪魔な壁にしか思えない。
すいません、と言って近付けばいい。
確かにそうだが、どうしてもそうは出来ない。
あたしにとって前に人がいるのが邪魔なように、あたしが寄れば二人の邪魔になる気がした。
あたしは磐井の言った事を思い出す。
滝沢先生は彼氏持ちだ。
なのにどうして入りづらいのか。
また彼奴の言った事を思い出す。
北条先生は滝沢先生が好きだって。
…違うと信じたかった。
だが、もう肯定するしかない。
人を挟んで向こうに見える二人が、何を話しているかまでは分からない。
周りが煩すぎる。
だが、無秩序な喧騒の中でも、二人はセットに見える。
一緒にいる事が自然の理であるかのようだ。