元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~


あたしは一礼した。


顔を上げる前に、拍手の音を聴覚で捉えた。


そして皆がそうしてくれているのを目で確認した。


「はい、ありがとう。」


北条先生が言った。


あたしの挨拶は終わったのに、北条先生は動かなかった。


「一年間だったけど、俺は滝沢や他の実習生の山野や里田を教えていた時期もあったんだ。
こうやって教育実習で会えるの、凄く嬉しいもんでな、この中にも滝沢みたいに帰ってくる子がいたらその時はまた宜しくな。
…俺の話はこれで終わりだけど、皆何かあるか?」


誰も何も言わない。


何かを待つような静寂が教室を包む。


「なら今日はこれで終わりだ。
…帰りの挨拶は滝沢にやってもらおう。」


「いいんですか?」


「宜しく。」


あたしは皆を見た。


あたしがしても…いいかな。


「起立!」


一斉に立つあの音が、鳴っては一瞬で消える。


本当にお別れだ。


「さようなら!」

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