元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
それからも彼の仕事を手伝っていたのだが、どうにも機嫌が悪い。
会議で何かあった、が最も説得力があり可能性も高い理由と思われるが、それは違うはずだ。
彼は八つ当たりをするような人間ではない。
なら原因はあたしにあるのかと聞かれれば、それはそれで返答に困る。
彼を怒らせるような事はやっていないし、職員室を離れた事だって咎められる事ではない。
あたしは仕事を与えられておらず、すべき事を放棄したわけではないのだ。
手を動かしつつ、頭では堂々巡りな状態である。
そしたら悪循環だ。
「滝沢!」
「はっはい!」
「ホッチキス見てみろ!」
「…すいません!」
ホッチキスを紙の端に留めすぎて、その意味を成さなくなっていた。
しかも、もう既に相当な数になっており、やり直しにも時間がかかりそうだ。
「やり直します。」
「それもだけど、手元ちゃんと見ないでして、怪我したらどうするんだ!
ホッチキスは刃物なんだぞ!」
「ごめんなさい!」
「次からはちゃんとしろよ。」
「はい。」
そっか。
叱られたのに、安心した。
あたし、怪我したかもしれないんだ。