元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
彼がもうとっくにその場を去っていたと思っていたあたしは正直戸惑った。
「えっと…北条昴先生。
教育実習であたしのことみてくれてるの。」
「初めまして。
北条です。」
「初めまして。
村田真幸です。
妃奈がいつもお世話になっております。」
凄く居心地が悪い。
それもそうだ。
元彼と今の彼氏が同じ場所に居る。
「…滝沢、邪魔して悪かったな。
お休み。」
彼はその居心地の悪い舞台から降りた。
確かにここからはお互い反対方向に向かうのだが、彼には悪い事をした気がした。
あたしからすれば、彼の退場は九死に一生を得たようなものだが、彼が去らずとも良かった方法もあったのではないか。
「妃奈、妃奈!」
「ん?
あ、ごめんごめん。」
あたしは真幸と向き合った。
「なぁ妃奈、明後日に何か予定入れてる?」
「ううん。
大丈夫だよ。」
「俺、その日空いてるんだけどさ、何処か行かない?
俺は妃奈が行きたい所で良いんだけど。」
「じゃあ、映画館行こう!
明日から始まるので見たい映画有るの!」
それから真幸はあたしを家まで送ってくれた。
お互いを離さないように手を繋ぎながら。