元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
それから俺はドアの近くに行こうとした。
丁度その時だ。
俺の目に眠っている一人の女が写った。
滝沢…
このままだと、彼奴は確実に終点まで行ってしまうだろう。
駅員に起こされて蒼白な顔をするのが目に浮かんだ。
俺は少し笑いそうになりながらも、近付いて肩を揺すった。
「滝沢、滝沢!」
滝沢妃奈はゆっくりと目を開けた。
そして正面を向いて制止した。
寝ぼけてるいるようで、滝沢は何故起こされたかも分かっていなさそうだし、誰に起こされたかも理解してないようだ。
「次、滝沢の所だぞ。」
俺がそう言った後、またゆっくりとした動作で俺を見た。
まだ寝ぼけている滝沢は、人形のように何も話さない。
今こそ謝罪するチャンスだが、今はした所で意味はなさそうなので止めよう。
そう考えてたら、思いも寄らぬ言葉が耳に飛び込んできた。
「…昴?」