元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
刹那、心臓が大きな音を立てた。
ときめいた。
まだ寝ぼけていてトロンとした目が可愛いと思ったし、久しぶりに名前で呼ばれた事に、何とも言えない感情が芽生えた。
だが、そんな彼女もいつもの滝沢に戻り、俺も現実に戻ってきた。
「…ごめんなさい!」
滝沢を頭を下げて謝った。
言い終わっても頭は上げない。
そう、きっと上げられないのだ。
俺がどんな顔してるか怖くて。
次は俺が話す番だった。
それなのに、何と言ったら良いか分からない。
「…いや、いいよ。
気にしなくていいから。」
もっと適切な言葉があったに違いなかった。
ミスをした実習生に対する、もっと適当な言葉が。
それを思い付く事が出来ずに、俺は電車の到着を表す効果音を耳にした。