元カレ教師・完結編~君がいる日々、いない日々~
誠実そうな奴じゃないか、
滝沢妃奈を幸せに出来そうな。
「えっと…北条昴先生。
教育実習であたしのことみてくれてるの。」
滝沢は戸惑うように言う。
また、悪い事しちまった?
っていうか俺、この場にいるの邪魔じゃね?
俺はその事にやっと気付いた。
さて、どうやって自然にここから離れようか、俺は頭の隅で考え始める。
「初めまして。
北条です。」
「初めまして。
村田真幸です。
妃奈がいつもお世話になっております。」
本当に良さそうな奴だ。
滝沢が選んだ理由が分かる気がした。
「…滝沢、邪魔して悪かったな。
お休み。」
俺はそう言い二人から離れた。
やっと舞台の袖までやって来たが、二人の台詞が耳に入って来る。
勿論、盗み聞きするつもりなんてさらさら無い。
それでも若き恋人達の幸せな約束は、俺の脳に染み渡っていくのだ。
俺は駅を出て左に曲がり、走り出した。
俺はもう役者じゃないんだ。