桜姫紀
夜がふけるのはとても早かった。

「行きましょう、桜さん。」

「はい・・・。」

見張りはちょうど隠れ家を見渡せる場所の崖で待機。
でも隠れ家って穴の中だからな・・・。
簡単には見つけられないだろうけど。

「あの・・・。」

「え・・?」

葵さんが話しかけてきた。

「桜さんは・・その・・私のこと・・嫌い、ですか?」

「えぇぇ!?そんなこと・・」

バシュッ!!

「あっ、葵さん!?」

葵さんの腕には一本の矢。

「今抜きますから!いーっせいの!!」

矢は抜けたが葵さんの腕から大量の血が流れる。

「葵さん!?待ってください、いますぐ・・!!」

「カカカカ・・やっぱりいたか。」

「誰ですか!?」

いかつい体の男。手には通常の倍以上ある弓矢を抱えていた。

「おりゃあ、この国の役人さ。『夜行』がここにいると聞いてな。」

情報が、もれてる・・。

「あぁそうそう。」

まるで今思い出しました、というように
ポンと手をたたいた。

「・・・?」

「その矢な、」

「ただの矢じゃなくて、」

「毒矢だ。」

「~~~~~~っ!!!!」

声にならない叫びを葵さんがあげる。

「葵さん!?葵さん!?」

揺すってみても反応がない。

「なぁ、女・・。取引、といかないか。」

スッと小瓶を取り出した。

「これは解毒剤。これを渡す代わりに、夜行の隠れ家を教えろ。」

カカカ・・と気持ちの悪い声を男はあげた。

「桜さん、私はいいですから・・・!!」

「お生憎様!」

その直後に私は男に足払いをした。

「な・・!?」

不意打ちを突かれた男はよろける。

「私、欲張りなんです。そんな選択できません!!」

ニヤリと男が気持ち悪く笑った。

「そうか。それならそれなりの扱いをさせてもらう。」

「女だからって手加減されると思うなぁぁぁ!!」

男が私に矢を向けた。
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