桜姫紀
「あら、銀(しろがね)さん!」

え、誰・・?
顔を上げるとそこには綺麗な女の人。

「もしかしてこの子が妹の葵ちゃん?」

ストン、と座り込んで同じ目線になる。

「私は蝶。よろしくね、葵ちゃん。」

ちら、とおにいちゃんを見上げるとお兄ちゃんの雰囲気が
なんだか・・いつもと違う。

「今日も朝市で売るんですか?」

「あぁ。昨日よりは売れると思うのだが。」

「ふふ、いつも大繁盛ですものね。」

疎外感。孤独。
お兄ちゃん、お兄ちゃん。
ねぇどうして?
どうして私を見てくれないのーーー?


蝶さんはガラス細工の名人だった。

「はい、葵ちゃん。」

「うわぁ・・・。」

渡してくれたのは蓮の花のガラス細工。
花びら1枚1枚透き通っていて綺麗・・。
それはまるで蝶さんの透き通っている心のようで。

「さすがだな。」

「ふふ、どうもありがとうございます。」

すごいな、すごいな。
こんな綺麗なものが作れて。
すごいな、すごいな。
あんなに優しい心を持ってて。
すごいな、すごいな・・・。
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