桜姫紀
「落ち着いた?」

「うん・・・。」

目の前には蝶さんが煎れてくれたお茶。

「私ね、葵ちゃんがうらやましい。」

蝶さんが唐突に話し始めた。

「銀さんからあんなに思われて・・・。
この祝言だってね、貴方のためにお兄さんはやったのよ。」

「え・・?」

私の、ためにって?

「ほら銀さんはいつも働いているから
家庭のことは葵ちゃんがやってるでしょう?
それじゃあ、あまりにも可哀想だって・・。
まだたったの4歳なのにって。」

そうだったんだ・・。
そう言われると何だか自分が恥ずかしくなってきた。

「よーし、じゃあこれからは私が葵ちゃんのお母さん代わりね!」

え、お母さん・・?

「本当に、本当にお母さんになってくれるの!?」

「もちろんよ。」

お母さん。
私にはもういないお母さん。
ずっとあこがれてたんだ。
お母さんって呼んだり甘えたり話したりすることが。

「お母さん、大好き!」

私は蝶さんに飛びついた。

「私も。私も、大好き。」



そして2人は祝言を上げた。



お兄ちゃんは大好き。
お母さんも大好き。

みーんな、みーんな、大好きだから。


胸の痛みは少し残るけど、
2人を素直に祝福できたんだーーーー。
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